古来より禅、茶道、武道、能など日本文化では姿勢を重要視してきました。
昔のお侍さんやお相撲さんの立ち姿をみてみますと、表情や肩の筋肉は緩んでいても姿勢はしっかりしている印象があります。
… 姿勢を崩すことで特に罰則が設けられていたわけではありませんが、どうして日本人は正しい姿勢にこだわってきたのでしょうか?
それは、やはり姿勢を正すことで得られる恩恵があることを経験的に認識していたからではないでしょうか?
ではその恩恵とはいったい何なのでしょうか?
二足歩行である人間にとって姿勢を正すという行為は、重力に逆らって腹直筋や脊柱起立筋などの筋肉(抗重力筋)を働かせる行為です。
実は、この「抗重力筋」、ラットを用いた動物実験では、抗重力筋に関わる脳の部位を電気刺激しますと、 脳内の「セロトニン(5HT)」という精神を安定させるホルモンの発火を引き起こすことが明らかになっています。
うつの方は、この脳内のセロトニン量が不足していることが明らかになってから
近年の抗うつ薬ではセロトニンの量を調整する薬が開発されてきました。
人の脳内のセロトニン量の測定方法に関しましては、まだ一定の手法が確立しているとはいえませんが、
少なくとも動物実験の結果から、「抗重力筋」と「セロトニン」には密接な関係があると考えられます。
このような理由が直接関係しているかどうかは分かりませんが、
実際、うつの方には、猫背気味になっている方々が多いように感じます。
うつだから猫背になるのか?
または
猫背のようにしているから気分がうつ気味になっていくのか?
これはどちらが先に引き起こされる現象かは正確には分かりませんが、
ヨガでは古来より様々な姿勢を用いることで精神をコントロールすることをうまく活用してきました。
日本でも座禅中は姿勢の維持には気をつけると思います。
これも、あくまでも推測ですが、
姿勢を正すことで脳内のセロトニンの発火が促され、
禅を組むのにちょうど良い精神状態が得られるという経験則からきているのかもしれません。
一流のスポーツ選手は、普段から姿勢が美しいことはよく知られています。
普段から姿勢を正すことが、
もしかしましたら一流への道への一つの要素として考えられるといっても過言ではないかもしれません。
気分が落ち込んだ時は、一度姿勢を正してみてください。物事の見方が良い方向につながっていくかもしれません。
– 株式会社サイバー・ヨガ研究所 代表 辻 良史 –