錦織圭選手の今回の活躍は,まさに「怪我の功名」というべきものといえます(※全てではありません).
錦織選手は,足の術後の影響により直前まで今回の全米オープンにエントリーするかどうか悩んでいました.
結局参加することになりましたが,これが結果的に良かったのですね.
つまり,術後の回復具合が分からないままでの出場でしたので,本人にとってはきっとダメもとでの出場に近かったと思います.
それはつまり,結果にこだわらず,やれるところまでとりあえずやってみようというような肩の力が抜けた状態です.
何としても一回戦を突破しなければいけないとか,負けられないというプレッシャーはいつもよりかは少なかったと思われます.
つまり「勝ち」を意識しすぎないで済んだのですね.
私は常々このブログでも明記していますが大多数の日本人アスリートは,
「勝ち」を過剰に意識するあまり,プレッシャーに飲み込まれ,試合でのパフォーマンスが低下する選手をたくさんみてきました.
例えば次の一戦で金メダル獲得の試合が控えていたとしましょう.
①絶対に負けられない試合だ!
②ただプレーにだけ集中しよう 同じ実力の持ち主だった場合,
①と②の考えの選手がぶつかりあった場合, メンタル的に有利なのは圧倒的に②の選手でしょう.
イメージ的にも受けるプレッシャーのレベルが全く違うのがお分かりいただけるかと思います.
もちろん,プレッシャーがかかった状況でプレーだけに集中するには普段からヨガや脳波トレーニングが必要になってきます.
ただ考えを変えるだけでも相当プレッシャーは抑えられます.
①と②の脳科学的な違いは,不安と密接な関わりをもつ脳の「扁桃体」の興奮レベルです.
①のように「勝ち(結果)」を意識すると過去の失敗体験が思い出され, 脳の扁桃体が興奮して交感神経が過剰に活性化してしまうのです. その結果,交感神経は筋肉を収縮させ,心拍を増加させ,より酸素を必要とし,スタミナもロスさせます.
当然,パフォーマンスは下がります. 極端な話,練習で緊張しないのは,勝たなくても良いからです.
ですので,結果ではなく,自然とプレーだけに集中できるのです. 今回の錦織選手は,タイブレークでセットを失っても悔しがることなくすぐに気持ちを切り替え,常に淡々とプレーしています.
またリードしていても守りに入ることもしません.
これは,目の前のプレーに集中できている証拠です.
プレーに集中,没頭することをマインドフルネスといいますが,まさに「マインドフルネス・テニス」を体現していますね.
勝ち(結果)ではなく,プレー(今)に集中できると扁桃体は興奮しません.
結果的に交感神経も過剰に活性化することなく,サーブやストローク,ボレー全ての動作において硬さが抜けます.
結果,ミスが減り,のびのびとしたプレーを可能にします.
今度の準決勝は世界ランク1位のジョコビッチ選手ですが,十分勝算はあります.
男子プロテニスの層はとても厚いですから100位以内の選手であれば,誰でもトップ選手に勝てる実力があります.
ましてや錦織選手は11位ですし,向こうはそれこそ負けられないプレッシャーが相当あると思います.
メンタル的には錦織選手の方が有利といえます.
あとは,疲労の回復具合とお互いのファーストサーブの確率が鍵になってくると思います.
特にジョコビッチ選手のファーストサーブの確率が低いと,リターンが得意な錦織選手に勝利の女神は微笑むでしょう.
「日本人 史上初の決勝進出!」というモヤモヤはひとまず脇に置いておいて,
是非,「練習は試合のごとく,試合は練習のごとく 」のメンタリティーで!