メンタルトレーニングとスポーツ科学
これからのメンタルトレーニングは,科学との融合がテーマとなるでしょう.
なぜなら,心理検査やインタビューだけでは実際の心身の状態は分からないからです.
特に記名式の心理検査の場合,心理検査の結果をよく見せようと,故意にコントロールすることもできます.
チームスポーツなどでは監督やコーチに少しでも試合で役に立つ選手に思われたいが為に心理検査をコントロールしようと考えるアスリートがどうしても出てきます.
気持ちは分かりますが,これでは本当のところのメンタル状態は分かりません.
そこで役に立つのが生理検査による心身の「見える化」です.
ストレスによるダメージを受けたときの心身の反応や回復力などがある程度分かります.
さらに高いパフォーマンスには中レベルの脳の覚醒レベルが最適と考えられています.
緊張しすぎず,リラックスしすぎずの状態です.
この状態のことを“ゾーン”と呼んだり,“ピークパフォーマンス”と呼んだりします.
脳波分析を行えば,簡単に脳の覚醒レベルが割り出せます.
逆にいえば,脳波分析で分かることといえば覚醒レベルぐらいなものです(事象関連電位は除く).
長い睡眠研究の歴史でも脳波分析が主に使われていることからも明かです.
近年,ニューロフィードバック分野で様々な症状と脳波マッピングが関連づけられたりしていますが,
まだまだそこまで言い切れない段階といえます.
ですので,私は,脳波に関しては脳の覚醒レベルのみを指標として分析に使い,それをもってトレーニングしましょう!ということをお勧めしています.
脳波分析の結果,覚醒レベルが低いタイプには活性化が必要ですし,高覚醒タイプにはリラクセーションが必要なのです.
一律的にリラクセーショントレーニングをしてもうまくいかないのです.
眠気を帯びた人にリラクセーションを施せばどうなるか?容易にご想像いただけると思います.
さらに競技スポーツ分野でこうした分析を役立たせるには安静状態だけでなく,ストレス状態での測定も行い,安静状態との比較検討が必要になってきます.
ですのでアスリートにはストレスプロファイル(精神生理学的ストレス検査)が必要なのです.
私が愛用している測定機器はカナダのソートテクノロジー社製のものです.
ソートテクノロジーはこの分野のパイオニアであり,ソフトの使いやすさは群を抜いています.
「分析」と「トレーニング」が一体型のオールインワン・タイプであり,研究者,臨床家ともに満足できるものと思います.
さらにハード「プロコンプ・インフィニティ」はブルートゥースでも測定が行え,フィールドなどでの離れたアスリートへの測定も可能です.
8つの信号を同時計測でき,バイオフィードバックも,ニューロフィードバックも両方行えます.
故障も非常に少ないところも高評価ですね.
私は空いている時間によく自分自身にセンサーを付け,様々なシチュエーションを想定した実践プログラムを考えています.
そこには豪華で立派なトレーニングスタジオは必要なく,
例え,ボロボロな現場でもアイディアさえあれば,どこでもそこが「マインドルーム」となると信じています.
2020年の東京オリンピックまでにスポーツバイオフィードバックを取り入れたスポーツチームは確実に増えていくでしょう.
フィジカルトレーニングはどのチームも取り入れています.
そこからさらにパフォーマンスを高めるのに残された領域は,脳や自律神経のトレーニング領域なのです.
※「Mind Room(マインドルーム)」: ACミランの秘密の科学的メンタルトレーニングルーム(マインドルームではソートテクノロジー社製の製品が使用されています).