私は5年程前から勝ち負けを意識しない方が日本人アスリートのパフォーマンスは向上するという考えを提唱してきました.
今でも十分に正しいと思っていますし,ほぼ間違いない現象だと確信するまでに至りました.
その当時は,金メダルを取っている自分の姿をイメージする,目標を声に出して宣言する,絶対勝つんだという気持ちが大事だ,という時代でした.
ただ,多くの日本人アスリートの試合後のインタビューを聞いていると,
「勝ち急いでしまった」「メダルが頭に浮かんで緊張した」「日本の代表として負けられない」「応援してくれる人やスポンサーの為にも勝ちたい」といったワードが並び
「勝ちたい」という気持ちの裏側の気持ち,つまり「負けられない」という心理状態で覆いつくされているように感じたのです.
これは「負けたらどうしよう…」という心理状態で,とてもネガティブ(消極的)な状態です.
ここで,勝ち負けを放棄すれば,まず肩の荷が下ります.
そのままだと少し競技をする上では,エネルギー(積極性)に欠けてしまうので,
「思いっきり楽しもう!」「よし頑張るぞ!」「今まで練習してきたことを試合で思いっきり試したい!」「(過度な勝ち負けを放棄した状態で)勝ちにいくぞ!」
ニュアンス的には非常に相反することを書いているのですが,
この勝敗を放棄した状態で「勝ちにいくぞ!」という状態は理想的でポジティブで非常に積極的な心理状態です.
そこには,負けたくない,負けられないという後ろ向きな気持ちはありません.
守ってなんとか勝利を死守するという相手のミス待ちの状態ではなく,積極的に自ら勝利を手繰り寄せてくるという状態です.
こうしたメンタルのトレーニングは,普段の練習から可能です.
例えば,後輩や同じチーム内のライバルなど,自分が実力的に少し上で,負けられないような立場の場合に上記の勝敗を放棄した状態で「勝ちにいくぞ!」という状態を意識してみるだけで,
ネガティブな負けられないというネガティブ要因は消えていくと思います.
「この人とは対戦したくないな…できれば避けたいな…」と思っている状態では,既に心がネガティブ状態となり,身体はその心理状態に引きつられ,守りに徹し,攻め時に攻められなくなり,
エネルギーレベル(積極性)の高い相手が勝つことはほぼ目に見えています.
勝ち負けを意識しないだけで,緊張はかなり取れるのですが,競技スポーツはヨガや仏教などの精神修業ではありません.
ヨガのように心がニュートラルな状態となり,落ち着き過ぎてしまっては,少し積極性に欠けてしまいます.
イメージはクールな興奮状態とでもいいましょうか?
これは,もしかしたら脳内ホルモンのセロトニンの働きなのかもしれません.
日本人はこのホルモンの働き(受容体の機能)が欧米人に比べ,少し弱いと推測されているので,
「負けられない」というノルアドレナリンの分泌を促すような思考を抑え込むことで,セロトニンの働きが前面に出てくることが期待されます.
どうぞ一度お試しください.