副交感神経が優位になると,血管が拡張し,血行が促進し,その結果,手足等の皮膚温が上昇します.
緊張すれば,その逆の流れになります.
つまり,暗算などの精神的ストレス課題を素早く行ってもらうように指示をすると,安静状態に比べ,指先の皮膚温が低下していきます.
発汗程の素早い変化は引き起こしませんが,筋緊張や息止めなど,ストレス信号が筋肉系に影響が及びやすい方の場合は,持続的に低下していきます.
自律訓練法では,このリラクセーション反応後の状態をゴールとし,そこからその状態をイメージすることで実際のリラクセーションを促そうとします.
そして,あるセラピストは,参加者の皮膚温を上昇させるのが得意な人がいました.
そのセラピストがリラックス誘導すれば,多くの参加者が皮膚温の上昇に成功しました.
一方,そのセラピストと同じ方法論で,リラックス誘導しても一向に皮膚温を上昇させられないセラピストがいました
なぜでしょう?
あとで,参加者へのアンケートを実施したところ,リラックス誘導が不得意なセラピストは,参加者との関係性がうまくいっておらず,親近感がわかなかったことが判明しました.
アイスブレーキングというものです.
これが,こうした生理学的指標を測定する際の難しさをも物語っています.
つまり,同じ実験内容でも,その測定者が指示的にガイダンスを行っていた場合と,低姿勢で愛想よく行っていた場合とでは,得られるデータも異なってきてしまうということを意味しています.
ここら辺が人間研究の難しさですが,セラピストとしては,やはりクライエントとの関係性がとても大切で,「セラピーはガイダンスが9割!」という文言を臨床現場では良く聞いたりします.
私は,2011年に発生した東日本大震災の2ヵ月後に医師の先生方と現地にて,ストレスケアのボランティアをさせていただきました.
その時に活躍したのが,以下のアナログ式の指先の皮膚温計です.
様々なトラウマを抱えたままの被災者の方にとって,今自分がきちんとリラックスできているかどうかも分かりません.
そうした時に,ヨガなどのストレスケアを実施した後に皮膚温が上昇していると,本人たちも正しく行えていることに気づき,よりリラクセーションが促進していくことを知りました.
電源も不要ですので,ストレスケアに従事されているセラピストの皆様にもお勧めです.