2011年3月11日に発生した「東日本大震災」の復興支援として、
私は発生から一ヶ月半後に、ゴールデンウィークを利用してストレスケアのボランティア活動をさせていただきました。
電車がまだ復旧していませんでしたから、私は茨城県つくば市から岩手県花巻市へと車で向かいました。
高速道路もまだ完全に修復されておらず、路面がデコボコしておりましたので、現地に着く頃には明け方になっていました。
当時は、五月でもまだ肌寒かった記憶があります。
翌日、現地で統合医療研究所の竹林先生の医療チームと合流しました。
岩手大学の山口先生、産婦人科医の斎藤先生、岩手県のヨーガ療法士の方々も駆けつけてくださいました。
そして、「花巻温泉ホテル」を拠点として、近隣のホテルや旅館に避難している被災者の方々に
ストレスケアに関する講義と実技のワークショップを行いながら、ヨーガ療法のご指導をさせていただきました。
意気込んでボランティア活動に参加したのはいいのですが、
男性の被災者の方々にはほとんどヨガに関心を持ってもらえませんでした。
これは、無理もありません。
やはり、ヨガといいますとスタジオで若い女性がフィットネス目的に取り組んでいるイメージがあるのだと思います。
本によく掲載されているように、○○のポーズをすれば、○○によく効くというイメージでしょうか?
ですので、肩こりには効いても、ヨガで、ストレスが緩和するというイメージが湧かないのだと思われます。
「セラピーはガイダンスが大切」といわれる所以は、こういうところにあるのだと思います。
実際は、どのポーズを行えばどの疾患に効果があるというものは、科学的根拠はありません。
ポーズの姿勢、形自体は重要ではなく、様々なポーズを通じて、肉体に加わる刺激の違いを感じ取り、
常に「今ここ」に集中するための「心の習慣」を身につけるのが目的です。
・あのとき○○していれば…(過去)
・これからどうなってしまうんだろう…(未来)
というように「過去」や「未来」に意識が向かわないようにするのが真意です。
「今ここ」に集中する継続的なトレーニングにより、脳の「島」や「背内側前頭前野」と呼ばれる部位が肥大することが明らかになってきました。
裏を返せば、「今ここ」に集中する「心の習慣」を身につけるには、継続的なトレーニングが必要ということになります。
ですので、ヨーガ療法は単に一時的なストレスケアに終わらせるのではなく、
家で実習してもらうようためのセルフケアの指導も兼ねております。
専門家がいなくても、自分の身一つで家で実習できるところがヨーガ療法の最大の特徴、メリットといえます。
現地で同行させていただいた統合医療チームには様々な専門家の方々が集まっていました。
その中でも、直接的な効果が期待できるアロママッサージやハンドマッサージなどは、被災者の方々にとても人気がありました。
それに対し、ヨーガ療法は、その場でセルフケアの指導をさせていただいて、
日常的に家で実習していただくのが目的になります。
このセルフケアの指導が今後とても重要になってくるといえます。
なぜなら、
被災者の数に対し、セラピストの数は不足しているという現状があるからです。
ですので、セルフケアの方法をレクチャーし、
それ学んだ被災者の方々が、自分の家族や知人、友人に教え、それが自然に広まっていくのが理想的といえます。